AFTER6JUNCTION 2020.11.3 (Tue) 池澤春菜まとめ

 

パーソナリティ 宇多丸 

火曜パートナー 宇垣美里

ゲスト 池澤春菜

 

 

宇多丸 時刻は6時30分になりました。11月3日火曜日、TBSラジオをキーステーションにお送りしている『AFTER6JUNCTION』、パーソナリティの宇多丸です。

 

宇垣 火曜パートナーの宇垣美里です。ここからはカルチャー界の重要人物を迎える〈カルチャートーク〉、今夜は11月限定のこちらの企画。

 

(SE)

 

宇多丸 〈アトロク秋の推薦図書月刊〉!! とゆうことで始まってしまいました。昨年に引き続き毎日誰かが次々とおすすめの本をドサドサドサドサと紹介して、明らかに人間の処理能力を超えていくとゆう1ヵ月。ただし今年は、去年さすがに冊数が多すぎたんじゃいかとゆうことで。

 

宇垣 全部は読めませんでしたから。

 

宇多丸 そうなんです。あと昨日の伊賀大介さんの1冊のおすすめでも全然時間がやっぱり足りなくなったりするじゃねえかみたいなことで、ルール改定をいたしまして、今回はひとり1冊ずつ。

 もちろん1冊にまつわる感じとか、「これもすすめたかったんです」みたいなかたちはいいんですけど、一応1冊看板としてバンッと推すみたいな感じでわかりやすく進めてみようかなとおもっております。とゆうことで。

 

宇垣 2日目の推薦人はこのかたです!!

 

池澤 こんばんは。池澤春菜です。いま・・・ちょっと・・・今日・・・・よろしくお願いします!!

 

宇垣 なにか後ろ暗いぞこのかた(笑)。

 

宇多丸 いったいなんでしょう。

 

池澤 (※白々しく)なんでもないですよ~??

 

宇多丸 会長!! 会長!!

 

宇垣 会長!! レギュラー!!

 

池澤 ありがとうございます(笑)。

 

宇多丸 とゆうことで、池澤さんにはいつも小説は紹介していただいてるんですが、「推薦図書もぜひお願いします」とゆうことで、いつもは新刊を中心にご紹介いただいてますが、「今回はオールタイムベスト的なこともありですよ」と。

 

池澤 いつも3冊ご紹介してるんですが、今日は1冊??ですね。

 

宇垣 ほんまやろか(笑)。

 

宇多丸 とゆうことで改めて池澤春菜のご紹介を宇垣さんお願いします。

 

宇垣 池澤春菜さんは声優、エッセイストで、年間300冊以上の本を読む活字中毒者。著書に『乙女の読書道』『SFのSは、ステキのS』、またお父様池澤夏樹さんとの対談集『ぜんぶ本の話』などがあります。そして今年の9月、第20代日本SF作家クラブの会長に就任されました。

 

池澤 ありがとうございます。

 

宇多丸 改めまして、〈日本SF作家クラブ特集〉もお世話になりました。

 

池澤 こちらこそ。

 

宇多丸 15代会長新井素子さんともちろんカジュアルに話していただきましたけど、やっぱり新井素子さんの、〈貫禄〉とゆう言葉が似合う感じではないけれども、たとえば文体の話なんかをうかがったじゃないですか途中で。「うわっ、なんかすごい話聞いてるぞこれ」みたいな。

 

池澤 すごい軽やかにわかりやすい言葉で話してくださるけど、あとあとからその意味とか重みがジワジワジワジワって沁み込んできて「いまわたしすごいこと聞いちゃったな」って。

 

宇多丸 そうそうそう。その感じなんですよ。あと聞きが結構「あれっ、新井素子さんすごい話をしてなかったかな」みたいな。

 

宇垣 「サラッと言ってくださったけど、あれっ??」みたいな。

 

宇多丸 また改めて15代会長もよろしくお願いします。

 

池澤 ぜひ。わたしもお話聞きたいです、わたしも。

 

宇多丸 で、いかがでしょう。最近もドバドバ読んでいるんでしょうか。

 

池澤 読んでますね。なんか〈読書の秋〉とか言いますけど〈読書の四季〉ですね。

 

宇垣 オールタイム(笑)。

 

宇多丸 〈トゥウェンティー・フォー/セブン〉とゆうことですね。とゆうことで、いつもいつもたくさん読まれている池澤春菜さんですが、このあと今回の〈推薦図書月刊〉にふさわしい入魂の〈1冊〉とゆう。

 

池澤 〈1冊〉・・・はいっ!!

 

宇垣 元気がいい(笑)。

 

宇多丸 よろしくお願いします。

 

宇垣 お願いします。

 

池澤 お願いします(笑)。

  

 

~~~CM~~~

 

 

宇垣 ここからは〈アトロク秋の推薦図書月刊〉、2日目となる今夜のゲストは声優、エッセイスト、そして日本SF作家クラブ会長の池澤春菜さんです。改めてよろしくお願いします。

 

池澤 よろしくお願いします。

 

宇多丸 それでは入魂の1冊、なにがくるのかな。

 

宇垣 入魂の1冊は?? 発表お願いします!!

 

(SE)

 

池澤 「(※エコーとともに)とびきりおしゃれで世界一パワフル!! 大魔法使いクレストマンシーを呼べばどんなトラブルもなんとかなる!!」。とゆうことで、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(Diana Wynne Jones)の『クレストマンシー』シリーズです。

 

宇多丸 シリーズ(笑)。池澤さん、そんなに恐縮しないでください。いいんです。焦点が1コに絞れてればこれはもうありです。

 

池澤 1冊とゆうかひとりです!! ひとりをご紹介したい!! ひとりをご紹介しようかなぁとおもったら、たまたまシリーズで7冊とかになっちゃったかなってゆう。たまたまね。ひとり!!

 

宇多丸 でも7冊とゆうのはまとめて1作品とゆうこと。

 

池澤 ちょっと分厚めの1冊ってゆうことでいきましょう。

 

宇垣 えらい分厚い、鈍器や(笑)。

 

宇多丸 そうゆうことにしておきましょう。改めて池澤さんが読みを本気でやられると「ヤバイ、カネとれるこれ!!」とゆう感じがしますね。プロの声最高です。とゆうことで、改めて『クレストマンシー』どうゆうものなのか、ご紹介お願いします。

 

宇垣 著者はイギリスの児童文学作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズさん。1977年に第1作『大魔法使いクレストマンシー 魔女と暮らせば (Charmed life)』以降『大魔法使いクレストマンシー』シリーズとして全7作を発表されております。

 異世界を舞台にしたファンタジー・シリーズで同時に複数の世界が存在している中、それぞれの平行世界において大魔法使いクレストマンシーと呼ばれる主人公が魔法に関連した事件を解決していくとゆう連作シリーズとなっています。

 

宇多丸 ちなみに今年の〈推薦図書特集〉は一応BGMとして合うような曲を流しましょうとゆうか、「ご指定があれば」みたいなことを言ってたんですけど、いま後ろで流れてるのは??

 

池澤 『ハウルの動く城』。ダイアナ・ウィン・ジョーンズはこの『ハウルの動く城』の原作者でもあるんです。日本だとそれがわかりやすいご紹介のしかたかなとおもったんですけど、「いやいや、ダイアナ・ウィン・ジョーンズで『ハウル』・・・『ハウル』もいいけど『クレストマンシー』でしょ!!」ってゆう。

 

宇垣 拍手!!

 

宇多丸 これ、宇垣さんが実は幼少時の愛読書とゆうことで。

 

宇垣 大好きで。ごめんなさい、図書館だったんですけど、図書館に通ってこれ全部読みましたし、それで好きになりすぎて『ハウル』はジブリになる前からわたしは知っていました。

 

宇多丸 「あれをやるんだ」みたいなことなだ。

 

宇垣 「どうすんの??」とおもって。

 

池澤 「(※高飛車に)あぁ、あれね。『ハウルの動く城』。ハァ~ン」みたいな感じ。

 

宇多丸 そうですか。これ基礎教養ですね。

 

宇垣 だからますます好きになりました。

 

宇多丸 『ハウル』は『魔法使いハウルと火の悪魔 (Howl's Moving Castle)』とゆうのが原作ですね。

 

池澤 そのあとに『アブタラと空飛ぶ絨毯 (Castle in the Air)』とゆうのもあるんですけど、でもわたしが推したいのは『クレストマンシー』ですね。

 

宇多丸 『ハウル』はだからほかのシリーズとゆうか、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさん、これから著者の説明もあるとおもいますが、ほんとの代表作は『クレストマンシー』シリーズとゆう。

 

池澤 わたくしの個人的代表作はね。

 

宇多丸 とゆうことで、まずはなぜこの作品を推そうとおもわれたんでしょうか。

 

池澤 わたしの「生涯でいちばん好きな作家は誰ですか」って訊かれたらダイアナ・ウィン・ジョーンズなんですよ。どのくらい好きかってゆうと、いま持ってきたんですけど、この『魔法? 魔法!』とゆう本が文庫版になったときに、わたし解説を書かせていただいたんですね。書き終わって熱出して寝込んだんですよ。

 

宇垣 恐ろしい話だ。

 

池澤 なんか「こんなものを書かせていただけるのか!!」ってゆうので、ほんとに1ヵ月悩みに悩んで、書き直して書き直して書き直してってやりすぎて、最後は自分の家の和室に自らカンヅメになったんですよ。自主的なカンヅメ。飲み物と食べ物を持ち込んで「書き終わるまでわたしはこの部屋から出ません」てやって、その部屋で寝起きをして3日間ぐらい。

 

宇多丸 そこまで自ら研ぎ澄まして。

 

宇垣 すごい。つめこんでつめこんで。

 

池澤 で、終わって、送って、寝込んだんです。

 

宇多丸 ほんとに精魂のすべてをそそぎ込んだとゆう。

 

池澤 そのくらい好きな作家で。唯一無二なんですよ。〈イギリスの宝〉とか〈英国ファンタジーの女王〉って言われている人なんですけど、ファンタジーって言うと結構パターンがみんなあるとおもうんですね。たとえばエルフが出てくるとか、旅に出るとか。そうゆうパターンをすべて彼女はぶち壊していくんですよ。

 ご本人もファンタジー世界のガイドブックみたいな、すごくシニカルでユーモアに満ちた、あいうえお順になっている用語集みたいなのを出しているんですね。なので全部ファンタジーのことを知っていて、さらにその上を超えてゆくってゆう、すさまじい力量の持ち主なんです。

 

宇多丸 ダイアナ・ウィン・ジョーンズさん、1934年生まれで2011年に亡くなられてるんですね。

 

池澤 そうなんです。(※かなしそうに)もうわたしの人生の火がひとつ消えました。

 

宇多丸 その思い入れの感じだったらさぞかしってゆうのもありますし、ぼくが知らなかったのは、『ロード・オブ・ザ・リング (The Lord of the Rings)』の著者であるトールキン(J. R. R. Tolkien)のお弟子さんなんですね。

 

池澤 でも大学でトールキンの授業をとってたそうなんですけど、全然やる気がなくて、4人しかクラスメイトいなかったって(笑)。

 

宇垣 すごい、そんなことが!! もったいない!!

 

宇多丸 ぜいたく!!

 

池澤 あと『ナルニア(国物語) (The Chronicles of Narnia)』のルイス(C. S. Lewis)とかも。

 

宇多丸 みんなじゃあトールキンのもとにいたんだ。その中でダイアナ・ウィン・ジョーンズさんはちょっとすべての型を知り尽くした上での型破りをやるとこがポイント。

 

池澤 そうですね。あとは登場人物が個性的ってゆう言葉では物足りないぐらいぶっ飛んだ人物を書いてて、特に意地悪な登場人物を書くのが上手いんですよ。

 

宇垣 最後までいじわるですよね。

 

池澤 そうなんです。その意地悪が、でもものすごい「いる!! こうゆう人いる!!」ってゆうような、たとえばちょっと意地悪なおばさんがいる。おばさんが電話かけてきて「何月何日に海に行きたいとおもうの」「全然大丈夫よ。車なんて出してもらわなくてもわたし体弱いけどひとりで行けるから」。断りにくいでしょ??

 

宇多丸 (笑)

 

池澤 リアリティのある意地悪でしょ??

 

宇多丸 なるほどね。そうゆう現実にもいる感じの人間のそうゆう面をおもしろく出してくる。

 

池澤 最後までその人物が改心したりもしないんですよ。意地悪な人は意地悪なまま。だって意地悪な人は生まれつきそうで、信念を持ってそうゆう道を歩んでいるんだから、そんなに簡単に改心したりしない。

 

宇多丸 「物語側が強制しちゃうのってどうかな」ってのありますもんね、人のありかたをね。

 

池澤 なんかその登場人物がただのコマになってしまうのではなくて、ちゃんとその人はその人の人生を生きているってゆう。

 

宇多丸 なるほど。実在感をもって感じられるとゆうような。宇垣さんもじゃあそうゆう記憶の部分は。

 

宇垣 そうですね、あと平行世界をえがいていて、魔法がない世界とか、魔法の世界とか、いろんな世界があるんですけど、なんとなくそれを読んでると「あっ、あるのかもしれない。わたしはいま魔法がない世界に生きてるけど、もしかしたら出してないだけで、わたしにも魔法があって、そのはかりを使ったら使えるかもしれないし、違う世界にはわたしと似たような人がいるかもしれない」っておもうのがわたしはすごく好きで。

 

池澤 この『クレストマンシー』も、この世界には12の系統がって、それぞれに9つの世界があるんですね。その9つの世界は系統が近ければ近いほど似てるんですよ。

 わたしたちがいま生きているこの世界は第12世界の世界Bなんです。クレストマンシーたちがいるのは第12世界の世界Aなんです。隣なんですよ。夢の中で1コ曲がり角を曲がったら魔法の使える世界にわたしたちは行けるんです。

 

宇多丸 そっか。でも全然かけ離れた世界もありってことですよね。

 

池澤 あります。だから、12世界からたとえばもっともっと6とか行っちゃったら生き物として全く違うかもしれない。

 

宇多丸 じゃあSFの領域とゆうかね。

 

池澤 そうですね、ここはSFですね完全に。

 

宇多丸 クレストマンシーさんはどうゆうキャラクターなんですか。

 

池澤 クレストマンシーとゆうのは人の名前ではなくて役職の名前なんです。

 

宇多丸 あっ、そうなんだ。

 

池澤 だいたいその平行世界9つにそれぞれの自分の分身がいるんですよ。でもまれにその分身が1コにギュッて集まって、9コの魂を持った存在が生まれてしまうんです。

 とゆうことはひとの9倍の魔法を持ってるんですね。なので世界の誰よりも強い魔法の力を持ってる。その人がクレストマンシーとゆう役職に就いて、その平行世界の平和を守るために監査をする。

 なのでたとえばなにかトラブルがあったら「クレストマンシー!!」って呼んだらポワンッて出てくきてくれるんです。

 

宇垣 呼びたくなるのこれが!!

 

宇多丸 (笑)

 

池澤 なので今回のこの『クレストマンシー』シリーズでは、いちばん主人公として活躍するのはクリストファーとゆう少年なんですけど、その前のゲイブリエルさんとか、「もしかしてこのクレストマンシー、次はこの人かな」ってゆう男の子が出てきたりとか。

 

宇多丸 継承されていくわけですね。

 

池澤 そうなんです。

 

宇多丸 じゃあほんとにいろんな話のパターンが作れるってゆうとこがまずある。

 

池澤 そうです。なので世界を変えることもできるし、登場人物を変えることもできるし、ほかのお話だけど前のお話に出てきたあの人がヒョイって出てきて、「あぁっ、こんなところでご無事を確認できるとは!!」とか。

 

宇多丸 ユニバース的なそうゆうアレもあったりする。

 

池澤 はい。

 

宇多丸 ちなみにクレストマンシーさんはどうやって解決していくタイプなんですか。

 

池澤 基本的にはクリストファーは非常に無気力で、やる気がなくて怠惰で、めっちゃイケメンでおしゃれで、くちが悪くって、すっごい慇懃無礼で、感じ悪いです。

 

宇多丸 かっこいいけどヤな人みたいな。

 

宇垣 でも好きじゃないですかそうゆう人(笑)。

 

池澤 だから「クレストマンシー!!」って呼ばれると出てくるんですけど、ものすごい格好してるんですよ。全身にドラゴンの刺繡のついた金と緑のガウンとか着てきて「ちょうどいま寝たところだたんだけどなぁ」みたいな感じでフラフラッと来て、「なるほどなるほど。はい、パチンッ。じゃあ帰るね」みたいな。

 

宇多丸 へぇ~。

 

池澤 でもそんなクリストファーも子どものころはめちゃくちゃ苦労してたりとか、9つある魂のうちほとんどをもうすでになくしてしまっていたり、ひとに利用されたりとか、「そうゆういろいろがあって、このゆがんだ性格になっちゃったのか!!」ってゆうの、生い立ちからすべてわたしたちは知ることができる。

 

宇垣 それは好きじゃないですか!!

 

宇多丸 (笑)

 

宇垣 結論(笑)。

 

宇多丸 宇垣さんはおいくつぐらいのときに読んでたんですか。

 

宇垣 小学生。だって自転車で図書館に行ってたころなんで。小学生のころだったんですけど、いま改めて「あっ、読み返そう」とおもいました。

 

宇多丸 小学生が読んでもわかる話でもありってゆうことなんですね。

 

池澤 もちろんです。主人公は結構子どもさんたちなので、クリストファーが子どものときはクリストファーが主人公だし、クリストファーが大人になってからはちゃんと次の世代の子どもたちががんばるんです。最後にちゃんとクレストマンシーがなんとかしてくれる、みたいな。

 でも子どもたちは子どもたちでほんとに大変な事態に巻き込まれて、その中で精一杯がんばるので、大人が読んでも子どもが読んでもちゃんと楽しめる。

 

宇多丸 なるほど。これちなみに7巻あるわけですよね。順番に1から読まないとわかんないみたいなことは。

 

池澤 いえ、どれから読んでも大丈夫なんですけど、この世界がちょっと複雑なので、さっき言ったみたいな12の系列があって、その中に9つの世界があってとか、「クレストマンシーはこうゆう役職で」みたいなのをわかりやすく頭に入れていくためにはたぶん『魔法使いは誰だ』

ってゆうのから読んでくのがいいかとおもいます。

 

宇垣 大好き!! わたしはこれを読んですごい好きで、次から次へと予約して取り寄せました。

 

宇多丸 入口がこれだったんだ。

 

池澤 これは謎解きなんですよ、この世界では魔法が禁じられてるんです。魔法を使ったり、魔法使いであることがバレると処刑されてしまうんですね。

 そこの世界にある寄宿学校みたいな中である日「このクラスに魔法使いがいる」ってゆうメモが発見されるんですよ。じゃあそのメモを書いたのは誰で、その魔法使いってゆうのは誰なんだってゆうので、犯人捜しで、犯人だとおもわれて追いつめられた女の子がある日古くから伝わる助けを呼ぶ呪文てゆうので「クレストマンシー」って叫ぶんです。

 

宇多丸 なるほど。じゃあちょっとヒーロー的に救いの役目もあるし、いまお話うかがったようにちょっとミステリー的な要素もあるし。

 

池澤 なので主人公たちが知らないところから入っていくので、自分たちとおなじ目線でこのクレストマンシーの世界に入っていくことができます。

 

宇多丸 そっかそっか、4作目。まさに宇垣さんの入り口だった。

 

宇垣 これ4作目なのかな。でもすっごいいいんですよ。あっ、ほんとだ。これいいし、意外と力が弱かった子が「どうせあるんだったら強いほうがよかったよ」って、意地悪な女の子が確か言ってて、「ざまあ!!」とかおもいながら読んだことをすごくおぼえてます。

 

池澤 意地悪な子はちゃんと意地悪、信念のある意地悪をしてくる。

 

宇多丸 ちなみに細かい話ですけど、最初の4作は77年に1作目が出て、4作目が82年で、そっからずいぶんあいだが開いてからの5作目なんですね。

 

池澤 そうですね、いちばん最後とかは2006年なので結構開いてますね。そのあいだも結構ダイアナ・ウィン・ジョーンズはいろいろな作品を書かれているので、ほかにも名作がいっぱいあるので、たぶんときどき『クレストマンシー』のシリーズはその世界に戻って書いて、またちょっとほかのことをやって、「そういえばあの人たちどうしてるかなぁ」って考え始めると物語が動いてまた戻って書いて、みたいな。何度も何度も彼女にとっても戻っていく世界なのかもしれないです。

 

宇多丸 ダイアナ・ウィン・ジョーンズは池澤さんがとにかく「このひとり挙げるなら」っておっしゃるわけですもんね。

 

池澤 たぶんほかのシリーズも、ハマると全部読みたくなるとおもいます。

 

宇多丸 とゆうことで改めて、〈アトロク秋の推薦図書月間〉、2日目のゲストは声優、エッセイスト、そして日本SF作家クラブ会長、池澤春菜さんのおすすめする入魂の1冊は、「とびきりおしゃれで世界一パワフル!! 大魔法使いクレストマンシーを呼べばどんなトラブルもなんとかなる!!」、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著『クレストマンシー』シリーズとゆうことで、7作シリーズですけど、入り口としては4作目の『魔法使いはだれだ (Witch Week)』。

 

池澤 あとおすすめは『クリストファーの魔法の旅 (The Lives of Christopher Chant)』。どうやってクリストファーがクレストマンシーになったかってゆう2作目と。あとは舞台がイタリアに移った『トニーノの歌う魔法 (The Magicians of Caprona)』。

 

宇垣 これも好き!!

 

池澤 これがまた華やかで、歌で物語が進んでいって、たくさんのかわいい猫たちが活躍して。でも敵が結構こわいんですよ。敵の使う魔法が陰湿でこわいんですよ。

 

宇多丸 1作ほとにほんとに色が違うんですね。ちゃんと役割とゆうか、あれもあって。

 

池澤 主人公たちの性格も全然違ったりしておもしろいです。

 

宇多丸 そこまで来たら1作目、77年の『魔女と暮らせば』から読めばいいじゃねえかとゆうことにもなりますので。

 

池澤 全部読めばいいんです。結局全部読んで、もう1回戻って、自分の好きな順番で読み直してもいいとおもいます。

 

宇多丸 これはいままで映像化されてないのが不思議なぐらいですね、お話うかがうと。

 

池澤 こっちなんじゃないかなぁ。でもクレストマンシーの麗しさをなかなか絵で表現できないのかなぁ。

 

宇垣 ハイセンスすぎて、普通の人にはできないおしゃれみたいなイメージです。

 

池澤 わたし、いまここに『魔女と暮らせば』ってゆう1冊を持ってきたんですけど、ここにものすごい付箋貼ってあるじゃないですか。これ全部クレストマンシーが着ているヘンテコな服のところに貼ってったらこんなことになったんです(笑)。

 

宇多丸 服描写でそんなにいっぱいあるんだ!!

 

池澤 すごいんですよ。ちょっと読むと「赤と紫の花ガラの絹のガウン。えりとそでぐちは金色」。

 

宇垣 だからわたしのイメージは菅田将暉さんみたいな、「この人が着たらおしゃれだけど、ほかの人が着たらパジャマ」みたいな。

 

池澤 ギラギラで、力づくで、みたいな。

 

宇多丸 なるほどね。宇垣さんの変な服好きもそうゆうところからできたのかもしれませんんね。

 

宇垣 ハッ!! 可能性が捨てきれない!!

 

池澤 クレストマンシーがきっかけかも!!

 

宇多丸 (笑)

 

宇垣 可能性がある!! なるほど。

 

宇多丸 すばらしい。ぼくは不勉強で知らなかったんで、これはすごいおもしろそうです。

 

池澤 夢中になって読んじゃうとおもいます。ほんとにこの世界にどっぷりひたって読んで、現実のいやなこととかなにもかも忘れてウワ~ッて読み終えて、現実に戻ってきたときに、でもちゃんと心の中にお土産を置いてってくれてるんですよダイアナ・ウィン・ジョーンズは。

「主人公たちあんだけ意地悪されてたな。あれキツかったな。でもわたし意外とこの現実でされてる意地悪大したことないかもしれない」とか。

 

宇多丸 周りの人を見る目であったりとかってゆうことなんですかね。とゆうことでありがとうございました。今回は『クレストマンシー』シリーズをおすすめいただきました。

 

宇垣 今日紹介した本は今後番組ホームページ、そしてInstagramのまとめ機能にアーカイブとしてアップしていきます。

 

宇多丸 とゆうことで池澤さん、でもやっぱりワン・シリーズでもここまでですよ時間。

 

池澤 わたし今日「150分語れる」って聞いて選んだんですけど。

 

宇垣 聞きたいけど!!(笑)

 

宇多丸 それはちょっとまた別の機会を、一席設けさせていただきます。池澤さんからお知らせごとなどありますか。

 

池澤 11月23日に〈ゲゲゲ忌〉とゆう水木しげるさんの命日に合わせていつも『ゲゲゲの鬼太郎』のイベントをやってるんですけど、その中でも11月23日が5忌のトークショーをやるんですね。このコロナ期にだいぶ話題になりましたアマビエとゆう役を第5忌で実はやっておりまして、そのアマビエとかでトークショーをやらせていただきます。

 

宇多丸 すげえ!! よりによってですね。

 

宇垣 ここにアマビエがいらっしゃる!!

 

宇多丸 それはすごい巡り合わせ。

 

池澤 なのでこのスタジオは(※声を変えて)ちゃんと殺菌しておくからね。大丈夫だよ。

 

宇多丸&宇垣 ありがとうございます!!

 

池澤 詳しくは〈ゲゲゲ忌〉、〈き〉は〈物忌み〉の〈いみ〉、忌野清志郎さんの〈いまわ〉ですね。それで検索していただけると出るとおもいます。

 

宇多丸 とゆうことで、毎回毎回すばらしいプレゼンありがとうございます。今日の推薦人は声優、エッセイスト、そして日本SF作家クラブ会長、池澤春菜さんでした。

 

宇垣 ありがとうございました。

 

池澤 おじゃまいたしました。ありがとうございました。