安理由香 『ごほうびちょーだい』(ネタバレ)

 

あらすじ

食べるのが大好き♡な高1の綾。1歳上のハル先輩をケガさせてしまい、お詫びに家の手伝いをすることに。手伝ったごほうびにもらったのはおいしいご飯!綾は先輩にも先輩の作る料理にも夢中になるのでした。そして2人は付き合うように。(「ザ マーガレット」2016年2月号より)

 

第1話

あらすじには〈ご飯〉とあるけれど、絵として出てくるのはどちらかというと〈スイーツ〉という印象が強くて、読み切りとして始まった最初に第1話を読んだ時はいわゆる〈フード理論〉的な読みかたとして、〈恋〉と〈スイーツ〉の話だと思って読んで、〈恋〉と〈スイーツ〉の関係をえがいたまんがなんてありきたりで、数年前にあったごはんを扱ったまんがのブームでもしかしたらえがき尽くされてるのかもしれないけど、そうゆうまんがをあまりよ読まなかった身としてはすごく好きな作品だと思った。

 

フード理論

〈フード理論〉は福田里香さんが提唱した理論で、本としては『まんがキッチン』や『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』としてまとめられていて、〈フード三原則〉と呼ばれるわかりやすい基本的な理論はこんな感じ。

 

フード三原則

1 善人は、フードをうまそうに食べる

2 正体不明者は、フードを食べない

3 悪人は、フードを祖末に扱う

「福田里香さんのフード理論とは何か!? - Naverまとめ」より)

 

こんな感じで食べ物を中心に作品中のキャラクターの立ち位置や人間関係を読み解いていくことができるという、初めて知った時は目からうろこだったのが〈フード理論〉。

 

〈ごはん〉と〈スイーツ〉の違い

〈恋〉も〈スイーツ〉もどっちも〈甘いもの〉というイメージだけれども、恋愛少女まんがの中においては〈ごはん〉がどうゆう役割を果たすかというと、〈生活〉なんだと勝手に思ってる。

 

別に恋に興味がないキャラクターでもごはんをもりもり食べていれば、その子の生活は上手くいってる描写になると思う。そこにさらに同じ子がスイーツをもりもりほうばっていたら恋も上手くいってるというような解釈ができるんじゃないかと思っていて、スイーツは〈恋〉の象徴でもあるけれども、もっといってしまうと〈彩り〉の象徴として読めるんじゃないかと思う。

 

〈食べる天才〉と〈作る天才〉

初めて見た時から未だに自分の脳裏のどこかにこびりついてるのが『男子ごはん』というレシピ本の帯に書かれていた〈食べる天才〉という言葉。

 

この本を買ったというわけではないけれども、おいしそうに食べることも〈才能〉のひとつなんだということをこの時まで考えたことがなかった気がして、人間誰でも食べ物を食べるけれども、豪快に食べる人やとにかく笑顔で食べる人とかは見ていて気もちいいし、逆になにを考えながら食べてるのかわからない表情で物を食べている人もたくさんいるから、〈食べる天才〉という言葉にハッとした。

 

もちろん人によっては作ることも得意なら食べるのも得意という人もいるだろうけれども、料理という同じでも〈自分のために作る〉のと〈誰かのために作る〉というのでは誰しも当たり前のように意味が違ってくると思う。

 

『ごほうびちょーだい』ではハル先輩は料理を差し出すシーンが多いけれども食べるシーンはほとんどなくて、逆に綾は作ることに失敗するシーンや食べるシーンが多い。

 

そのせいか、記憶のどこかにしまわれていた〈食べる天才〉と〈作る天才〉という言葉が飛び出してきた。